本日は、ブログコメント欄にいただいたご質問への回答を記事にまとめます。質問内容は、おそらく浜学園に通塾中のお子様だと思われますが、公開学力テスト国語読解問題の攻略方法についてです。
浜学園の公開学力テスト国語の問題は、漢字(書き取り)、読解問題は説明文と物語文で、回答形式は大半が記号問題、一部抜き出し問題もありますが、該当する箇所の「最初と最後の5文字」を抜き出すなど、難易度はそれほど高くありません。
5年生までであれば満点を取るお子様もいますし、平均点も高めです。ぼんず君の浜学園時代の公開学力テスト成績通知を見てみると、国語の場合、
小3の90点台で偏差値50台後半、
小4の90点台で偏差値60台前半、
小5の90点台で偏差値65超え、
小6の90点台で偏差値70超え
の結果でした。点数は4回分とも近いものを選びました。それぞれの回の難易度や平均点で多少のばらつきはあると思いますが、学年が上に上がるごとに国語だけでなくどの教科も得点することが難しくなります。
6年生の問題は、とにかく量が多すぎて、前に戻って読み返すクセを止めたり、速読の練習を事前にしておかないと高得点を取るのは難しいです。6年生で問題量が増えることは分かっていたので事前に練習をさせていましたが、それでも6年生になってしばらくの間は「(点が)取れない」と文句を言っていました。
今回のご質問の「読解問題」とは、おそらく説明文ではなく物語文のことだと思いますので、物語文の問題について話を進めます。
公開学力テストで出題される文章題は、主に説明文と物語文に分けられます。特に男子のお子様に「物語文の読解が苦手で、説明文の方が得意」な傾向が見られます。物語文読解の何が苦手であるかが分かれば、それぞれの対策は立てやすいです。
■会話中心で話が進むので流れがつかみにくい
ぼんず君も典型的な物語文苦手ボーイでした。ぼんず君が出来なかった箇所をつぶしていけば、同じような物語苦手男子や苦手女子から脱却するきっかけになるかもしれません。
物語文の問題を解く様子を見ていていちばんダメだなと思ったのは、話の流れをつかめていないことでした。複数名の登場人物による会話だけで話が進行する場合、会話が終わった時点で、
「で、どうなったの?」
と私が聞いても、次の話の展開が理解できていませんでした。会話のやりとりの中から、物語の中で実際に起きている変化や進行を読み取らなければなりません。文章で書かれていなくても、大人であれば、例えば
『2人が否定的な話を続けて会話が終わっているから、この件はあきらめたんだな。』
と想像できますが、「2人はこの件を続けることをあきらめた」と書いていないとそれが分からないのです。対策としては、
会話が終わった箇所、または会話の途中で、物語の展開が変わる箇所に印をつけさせました。
そして、それぞれのセリフによって、物語の展開がどう変わるのかを考えさせました。
■豊かな現代と異なる時代の話は難しい
中学受験を目指す環境にあるお子様の多くは、恵まれた環境で生活されていると思います。我が家はごく普通の家庭ですが、ぼんず君の気質は上げ膳据え膳のボンボンタイプです。食うに困るようなひもじい経験をしたことはなく、雨風をしのぐ、の言葉の意味も体感として分かりません(下線はすべてぼんず君が理解できなかった言葉です)。
浜学園のテキストに出ていた「六畳一間の掘立小屋」を全くイメージできませんでした。「なぜ一部屋なの?」と真顔で聞いてきました。貧しい、困難、逆境、の言葉からは遠い、豊かで恵まれた生活で育つと、そうでない内容の物語文を理解することが難しいです。
また、現代の話ではなく、少し前の戦時中、戦後の貧しく苦しかった日本が舞台の話も理解できません。集団疎開、防空壕、餓えと貧困のような重苦しい話を嫌がるお子様は多いと思います。
お子様が体感したことのない状況の物語を理解する上で役立つことは、
今と異なる時代背景の映画をDVDで見せる、です。
代表的な作品は、火垂るの墓(戦時中)、ALWAYS三丁目の夕日(高度成長期)があります。一度見れが十分ですので、お時間ある時にご鑑賞されるとよいと思います。
■顔や動作で感情を示唆する表現を知らない
登場人物の気持ちを読み取ることができず、問題の読み違えをするお子様は、保護者様の想像以上に多いです。大人であれば簡単な慣用表現をまだ十分に理解していないために起こる解釈違いです。
たとえば、
目を奪われる→目をつぶってしまう→怖い
目を細める→見えにくい→考え込む
のような、大人には想像もできない間違った解釈をすることもあります。上の例は、ぼんず君が物語文の問題で実際に間違えた例です。
このような登場人物の気持ちをあらわす言葉をまとめた便利な本があります。「 気持ちを読み解く読解レッスン帖」です。本の内容は以前のブログ記事でご紹介したことがあります。
物語を読むのが好きなお子様や物語の読解が得意なお子様には必要のない本ですが、物語の問題でおかしな間違いをするお子様は、一度この本を最初から再度まで一緒に確認して、知っている言葉と知らない言葉を確認されることをおすすめします。
■現代でも困難な状況にある主人公の理解は困難
戦時中の貧困のような現代と全く異なる時代が舞台となる物語に加えて、最近の出題傾向でよくみられるのは、現代の生活の中での登場人物の困難な状況を読み取るものです。
具体例をあげると、家族の離婚による登場人物の生活の変化、友人関係のいざこざによる心情の変化、優秀な同級生に対する嫉妬や劣等感を持つ登場人物の心情などです。
プラスの話よりも、マイナスの要素が含まれることが多いです。会話中心で物語が進み、会話のどの部分が次の展開の布石となるかを読み取らなければなりません。
明らかに時代が異なる戦時中の話よりも、むしろ現代が舞台の物語文の方が読み取りは難しいと私は思います。読書が趣味のお子様であれば、重松清さんの本を愛読されているかもしれません。重松さんの話は入試で非常に頻繁に出題されます。
ぼんず君は中学受験終了後、しばらくしてから平松清さんの本を読むようになりました。受験中はどれだけ「本を読みなさい」と言っても、鉄道図鑑しか見ませんでしたが、中学生になってから重松清に始まり、文庫本を毎日読んでいます(遅いよ…)。
■気持ちの葛藤をテーマごとにまとめた本
現代社会で生きる中で経験する可能性のある人間同士の複雑な感情(嫉妬、憧れなど)や複雑な家庭環境(離婚、死別)などをテーマごとに分類して説明する国語の読解本があります。「中学受験必ず出てくる国語のテーマ」です。
本の内容は以前のブログ記事でご紹介したことがあります。残念ながら絶版で、紙版は高額で取引されていましたが、アマゾンの電子書籍で再販されて以降は値段が落ち着いてきました。非常に良書です。我が家は紙版で愛用しておりました。
■日常生活でも一工夫を
国語の読解問題は女子よりも男子に苦手なお子様が多いです。女子は小学生の頃から同級生の他の女子の気持ちを推し量ったり、周りとのバランスを考えながら生活することが求められる一方、男子はざっくばらんで、よく言えば素朴、悪く言えばがさつなままでも、しばらくは何とかなります。
ぼんず君も登場人物の気持ちを読み取ることが非常に苦手でした。ぼんず君の場合は発想そのものが特殊すぎて、「それ、おかしいで」と採点をしながら何度も思ったものです。
発想修正のためには、ひとつ一つの場面ごとに登場人物がどう思うのか考えさせないといけないな、と思い、しばらくの間は、日常生活の中で「この場面でこう言われたら、相手はどう思う?」と聞くことを続けました。
こんなことまでしないと人の気持ちを読み取ることができるようにならないんだ…と疲れたことを覚えています。成長に伴い、いつかそのうちにできるようになるでしょうが、通塾生のゴールは中学受験合格なので、心の成長を待つだけでは時間切れになるかもしれません。
物語文の読み取りが苦手なお子様に対しては、簡単にできそうなことから試してみてください。
コメント
今日もなるほど!という内容で勉強になりました。
これからも楽しみにしています。
ありがとうございました。
こんにちは。コメントありがとうございます。
国語の学習方法を文章にすると、どうしても抽象的な内容になってしまいます。
少しでもお伝えできますように…思いながら、まとめました。
国語を集団授業で小学生に教えるのは難しいですね。
いつも拝読しています。
重松清さんではありませんか。
こんにちは。コメントありがとうございます。
そうです!間違えていました。ご指摘ありがとうございます。
本文修正しました。