本日は、SMBC日興証券のウェブサイト特設ページ「おしえて!イチロー先生」をご紹介します。
イチローが先生になって教壇に立ち、生徒役の子どもから大人までの疑問・質問に1つずつ答える動画集ですが、この内容がとにかく面白すぎて「早く文字化してブログで紹介しなければ」と大急ぎで記事にまとめました。
学校生活や勉強、友人に関する質問にイチローが1つずつ丁寧に回答しています。小学生にも分かるような表現で考えながら話す内容が哲学的で深いものばかりです。
ご紹介した質疑応答はすべて動画があります。1つの動画は1~2分と短いものばかりですので、ぜひ動画もご視聴ください。
■学校生活編
イチロー:僕の定義は、野球選手がトレーニングをする感じ。
Q1:学校で勉強しているのに、家でやる必要はあるのですか?そこまで勉強が好きではないのに。
イチロー:宿題はやりたくないよね。中には勉強が大好きで、それをクリアしていくのが気持ちいい人もいると思うのだけど。できればやりたくないでしょう。
大人になると、やりたくないことをやらないといけなくなる。その訓練と捉えることはできると思う。本当にやりたくないことをやらないとなると、社会で生きていけないから。好きなことばかりやっていると、社会人になると難しくなると思う。
イチロー:簡単ですよ。もっと出ちゃったらいい。突き抜けたら、人はもう「こいつは手に負えない」となるので。
Q3:クラスでうるさい人を静かにさせるにはどうしたらいいですか?
イチロー:生徒会長や学級委員などの肩書きだけでは周りは言うことを聞かない。普段の態度を見て判断される。「あいつが言うなら静かにしなきゃ」と思わすことができれば、勝ちである。
Q4:最近学校のクラスメイトとなじめないのですが、無理してでもその友達の輪に入るべきですか?
イチロー:難しい問題だけど、あまり無理する必要はないかと思う。疲れてしまうから。昔はストレスは大人が抱えるものと思われていたけど、今の時代はみんなくらいの年齢でもストレスがあるよね。
学校にはいろんな人がいて、自分がやりたいことだけを好きなようにやっていいわけではない。
輪に入っていくことで学ぶこともあると思うから、一度入ってみて見極めてみるのもいいかもしれない。一度入ってみて「やっぱり違うな」とか「入ってみるとこんな発見もあるな」とか、体験してみるのはとても大切なことだと思う。
最初から完全に閉ざすことを最初にするのはダメだと思う。
Q5:運動会でリレーの選手に選ばれるのはどうすればいいですか?
イチロー:やり方は二つあって、一つは先生を取り込んでしまう。先生と仲良くなって、そういう気持ちにさせてしまう。えこひいきを誘うということですね。足は速くならないけど。リレーの選手には選ばれるでしょう。
もう一つは、走り方を変えるだけで随分変わる。自分に合う動きをいろいろ試しながら、失敗しながらも自分に合う走り方を見つけられれば、きっと速くなってリレーの選手に選ばれるのではないかと思います。
僕は足が速かったです。リレーでアンカーに選ばれることが多かったです。ごぼう抜きしたいからわざわざ抜かせておいて、最後に全部抜いていくというイヤな性格の小学生でした笑。
■将来の夢編
Q6:中学受験に挑戦しようと思っているのですが、将来の夢を決めていないまま進路を決めてもいいのでしょうか?
イチロー:僕の場合は野球選手になるという大きな夢があって、それに向かって進んでいくことができたので迷うことがなかった。僕は野球選手の中では細くて、「そんな細い体ではできないよ」とみんなに言われた。
中途半端に僕は勉強ができたので、先生たちは「野球ではなくて勉強の方で進んでほしい」と言われたが、そこは自分の意志を貫いて、僕はそこで勉強を完全に捨てました。
自分の夢がまだ完全に見えていない時は、一生懸命取り組んでいればどこかで見えてくるんじゃないか。迷っている状態や見つかっていない状態は、実はいい状態ではないのかなと今聞いていて思う。
一生懸命生きていると、それが見えてくると思う。いろんな体験をすることでしか見えてこない気がする。
イチロー:これが僕の夢だ、私の夢だというのを持っている人?
Q7:僕はお寿司が好きで寿司屋を開きたいという夢を持っていますが、どう思いますか?
イチロー:大好きなことが自分の仕事になると、大変なことがほとんどで心から楽しめなくなる現象が起きる。それを受け止めてがんばっていくことができるかどうかは、今やっていることが好きかどうかがポイントになる。
僕は野球をプロとしてやってきたけれども、小学生や中学生の時にやってきた野球とは全く違ってそういう楽しさはゼロだった。 プロになると責任がついて回る。うまくいった時は言葉では説明できないような気持ちのよさや快感があるけれども、基本的には失敗と常に向き合う時間となるのですごく大変。
だから、別の人生でもう一度同じように野球選手になりたいかと聞かれたら、はっきり「やりたい」と答えることができない。
これがプロの世界だということを知っておいてもらいたい。
イチロー:お金がすべてではないと思うけどそれがなくしては生きていけないので、どうやってお金を稼ぐかはすごく大事なこと。もっと大事なことは、どうやって使うかということ。これに最もその人が出る。
自分ではなくて人に喜んでもらうためにお金を使うことができたらすごくハッピーになると思う。だからそんな風になりたいと思っているのですけど、なかなかできないです。そういうキレイなお金の使い方ができるように、僕もそうありたいと思っている。
お金によって人生が狂ってしまう人を見ると、お金がすべてでないのは明らか。
■気持ちの持ち方編
イチロー:僕は他人から嫌われるのは大好きです。その人たちは僕に対するエネルギーが半端ないでしょう。僕にとっては、興味がないことがいちばん辛いですよ。無関心がいちばん辛いですよ。「大嫌い」と言われたら、僕はゾクゾクしますよ。
Q10:今までの野球人生の中で自信をなくしたことはありますか?
イチロー:自信はあったのですが、ずっと不安でした。野球は個人競技の要素も強いですが、チーム競技の側面があるので、そことの摩擦は生まれます。僕は向こうでは外国人ですし、そこで自信を失ったことがあります。
野球に関して自信を失ったことはないです。ただ、それに対応できるかどうかは別問題だったので、そことの向き合い方には悩みました。日本に戻ってプレーすることを真剣に考えた時期もありましたが、ギリギリで踏み止まってよかったなという経験があるので、一度はがんばってほしいなと思います。
イチロー:いや、前向きだけで生きてはいけないですよ。後ろ向きになることもあるし、向き合うことが大事ですよ。できれば前向きの方がいいですけど、辛い状態にある人に「がんばれ」と僕は言えないです。辛い状態にある人は、近くに居てくれるだけでうれしいと思います。そこに言葉は要らないですよ。寄り添ってそばに居てくれるだけでよいのではないでしょうか。
■保護者様編
Q12:わんぱくな男の子を育てていますが、全然言うことを聞きません。感情のままに怒ってしまいます。イチローさんはどうやって感情を抑えていましたか?
イチロー:まず、感情的になったら絶対に負けるということです。冷静なやつにはかなわないです。野球はヒットを打ったらとてもうれしいですが、それが相手に見える、つまり相手の選手を観察していて「こんなヒットで喜んでいるな」とか底が知れる感じがつまらないです。
感情に出さない相手は、相手として気持ちが悪いですよね。だから、僕は常にそれを意識して、腹立つことがあってもそれをぐっと抑える訓練を日々していました。
Q13:イチローさんは老いを受け入れられるタイプか、抗う方がいいか、どうお考えですか?
イチロー:僕は今46歳ですが、20歳の時の肌ツヤや見た目と比べたら残念ですよ。
特に男の人は、それなりに年を重ねたなという雰囲気はほしいです。ずっと若いままというのはあり得ないし、つまらないですよ。
人と久しぶりに会った時に「この人はちょっとエネルギーがなくなったな」とか、出ている空気がありますよね。あれは老いたくないですよね。エネルギーは持っていたい。
見た目は白髪になるし、いろいろなことが変わってきますが、それはいいです。エネルギーが老化するのはイヤでしょうね(動画紹介終わり)。
イチロー引退会見の内容はこのブログでも紹介したことがあります。ここまで極限に自分を追い込んで努力し続けることで、天才的な状態を維持してきたんだな…とただ感動したことをよく覚えています。
この動画の生徒役には大人の役者さんなどが混ざっています。大人の質問(悩み)はピンポイントな自分に向いた内容が多い一方で、小学生から高校生までの現役生徒さんの質問は言葉は稚拙ですが本質的な内容が多かったのは意外でした。イチローの回答は哲学的です。
人から嫌われるのは大好きとか、「こいつは手に負えない」と思われるまで出っ張ればいいなどは鋼のような精神力がないと真似できない心境ですが、学校生活や将来の夢に関してイチローが答える内容は、小学生のお子様にも参考になると思ってご紹介しました。
生徒役の皆さんと修行僧のような質疑応答ばかりしているのではなく、ほんわかするやりとりもあります。私がいちばん好きな動画は「そもそも『好き』って何ですか?」です。
給食を食べながら生徒さんたちと「好きな子いるでしょ?」という話題になり、そこから「好きって何?」という話につながります。この話をする時のイチローは小学生男児のようで、動画を見ながら私は小学生を見守る保護者に戻っていました。
濁りのない白目と美しい瞳は、邪を持たない小学生の瞳のようです。浜学園時代のぼんず君や同じクラスだった男のお子様達を思い出しました。
動画を次々と見続けると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。週末のお楽しみに、親子での対話ネタにぜひどうぞ!
我が家のぼんず君は「ぼくにはぼくのやり方があるから(参考にしない)」って、世界のイチローの金言を拝聴しないなんてアホすぎですが、無理やり見せても意味がありません。
小さい音でこっそり私が動画を見て「何?面白いの?」と気を引く作戦でも取ってみます。
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