本日はプレジデントオンラインの記事「算数が得意な子の脳はどこが違うのか?」をご紹介します。古い記事ですが、非常に参考になる内容が盛りだくさんです。
算数ができる子とできない子の違いや、生まれつき脳に差があるのかについて、MRIによる脳画像分析のスペシャリストで「脳の学校」代表の加藤俊徳氏に話を伺いました。
■適切な訓練で算数は誰でもできるようになる
「算数ができるかできないかは、生まれつきの能力の差ではありません。訓練すれば誰でもできるようになるのです。 ポイントは、脳の中に問題を解く回路ができているか、そしてそれが太いかどうかです」 と加藤氏は述べます。
「算数の問題を解く際には、脳の複数の箇所を使います。脳には大きく分けて、前頭葉、後頭葉、頭頂葉、側頭葉があり、それぞれの部位がつかさどる役割(運動、視覚、聴覚、記憶など)が分かっています。
しかし、現在の研究では、算数や数学のいろいろな問題を解くときに脳のどの箇所を使っていると特定はされていません。
脳の損傷研究でわかっているのは、脳のどこが壊れても、ちょっとずつ算数や数学の能力が下がるということ。つまり、算数や数学の問題を解く際には、脳の複数の部分を同時に働かせていると考えられます」
加藤氏は、2つの脳の図を描いて説明してくれました。■思考回路が出来上がってると楽に解ける
「Aは悩んでいるとき、Bは楽に解けるときの脳のイメージです。初めて問題が出されたとき、脳の中で思考がさまざまな箇所を巡って答えを導き出そうとします。これがAの脳」 問題を解くためにはどの部分を使えばいいかまだ絞り切れていない状態です。
「一方で、楽に解けるときの脳では、脳のどの箇所をどの順番で使えばいいかが特定されています。そのルートが出来上がっているので、Bの図のようにスムーズに思考回路がつながって、解答が出せるのです。
「解けない問題が解けたとき、カチッと何かがはまったような感じがして、すっきりした経験があるでしょう。これが、回路がつながった瞬間なのです」
一度解いた問題をもう一度解いたときに簡単に感じられたり、前より短時間で解けたりするのは、この回路が出来上がっているからです。Bの脳では、脳に負担がかかっていないクールな状態。脳は無駄なエネルギーを使わなくて済みます。
一方で、 「問題が解けなくてどうしていいかわからない、頭の中がふわ~っとなるような感じが、まさしくAの状態なのです」
■太い回路が問題を解く上で役立つ2つの利点
使われることで回路は太くなり、より楽に問題を解けるようになります。回路が太くなると、問題を解く際に2つのいいことが起こります。
1:応用が利く
ある問題を解く回路が確立できれば、それに類似した問題が出された際に、おおよそどこの箇所を使えばいいかが推測できます。基本の回路ができているので、そこからちょっとはずれるだけでいい。新しい問題に出合って、まったく知らない問題を解くときに試行錯誤するのとはわけが違います」
2:集中力の向上
回路がつながっていない頃やつながりたての頃は、回路をつなぐパイプが細く、短時間で情報を運ぶことができません。そのために、なかなか解答にたどり着けず、問題を解こうとする気持ちが散漫になりやすいです。
しかし回路を繰り返し使うことでパイプが太くなると、一気に多くの情報処理が可能になり、集中して問題を解くことができます。
■イヤイヤ勉強をやらせると脳回路がつながらない
しかし、この回路を強化するのが難しい」と加藤氏。
それは、脳のある性質が関係しています。 「脳は、ある回路を通って心地よいと感じたら、もう一度同じ回路を通ろうとします。でも、嫌だと思ったら二度と同じ道を通りたがらないんです」
問題が解けるというような成功体験は脳にとって気持ちよいものであり、もう一度同じ道を通ろうとします。しかし、同じ「解ける」でも、その子のレベルに合っていないものを無理にやらせたり、イヤイヤ解いた場合には、たとえ解くことができても、脳にとっては苦い印象を与えてしまいます。
脳の回路を強化するには、何度も同じルートを通ることが必要。そのルートを何度も通らせることができるかどうかが、優秀な子とそうでない子の分かれ目になります。
子供が「楽しい」と思うような環境づくりをすることが、解ける回路をつくる第一歩かもしれません。
■回路強化に効果的なことは手を使うこと
「回路をつくったり強化する際には、手を使うことをやってほしいです」と加藤氏。 答えがわからないときは、脳のどこを使えばいいか迷っている状態。その際に、頭の中だけで考えるより、指を折って数えたり、図に描いたり、式に起こしたりすることが大事だといいます。
「解けないときには、思考が脳の同じ箇所だけをグルグルと回っていることもあります。そのときに手を動かせば、思考を違う箇所に動かすことができるのです」
算数ができる子は、わかっていることをすべて書き込んだり、文章を図示化したりします。これは、脳にも刺激を与えているというわけです。
最後に、算数で育まれる力について一言。
「人間は生まれると『周りの人はこうしている』とまず他人を認識し、その後だんだん『自分はどうなのか』と、自分を確かめるようになります。算数で一番育まれるのは、前頭葉で発達するこの自己認識能力だと思います」
算数には必ず答えがある。問題を間違えた場合、自分がどこで誤ったかというプロセスを計算式の中で確認できる。それを認められる子は、どんどん成長していける。
「答えが間違ったという事実だけを意識する子は、それ以上先へ進めません」
「親は、子供が算数の問題で間違えた際に、どこでどんな間違いをしたかを子供自身が把握しているかにも気を付けたいところです。」
4年生までのお子様の保護者様は、ぜひともこの記事の内容を全面的に取り入れた算数学習を始めていただきたいです。
5年生のお子様は、計算問題や記述問題を解いて間違えた時に、どこで間違えたかを自分で発見し、確認する練習が非常に効果的です。
わが家の朝学習は時間がなかったので、私が計算問題の間違い箇所を発見していましたが、公開学力テストや復習テスト、計算テストの間違いは、答案を持ち帰った後に自宅で自分で発見させていました。
慣れるまではとてつもなく時間がかかり、本人も保護者様もイライラしますが、慣れてくると「ここで間違えている」と発見までにかかる時間が短くなり、やがてその間違いパターンを克服できるようになります。
6年生で過去問解き真っ最中のお子様は、問題が解けた時に頭の中で「カチッ」と音がする感覚を覚えておいていただきたいです。頭の中に回路をつなくイメージ作りも大切です。
その感覚を試験当日に再現できるよう、冠模試や志望校別特訓の復習テストを本番と思って受験されることをおすすめします。
私はこの記事のおかげで脳回路の話を入塾前から知っていましたので、ぼんず君を自宅で学習指導する際には、回路の強化を意識しながら学習指導をすることができました。
国語や社会の場合は、回路も大切ですが、頭の中の樹木構造を重視しました。
やみくもに詰め込むよりも、頭の中への入れ方を先に決めてから自宅学習(または通塾)を開始すると、最初はしんどいですが、長期的には良い結果が得られると思います。
私の感覚では、樹木構造は一度確立できると安定して活用できますが、回路はしばらく使わないと細くなったり、回路が切れるイメージがあります。
計算問題は数日さぼると、スピードも精度も落ちるご経験をお持ちではないでしょうか。
最後に、脳が回路を作ってもいいなーと思えるような、楽しい学習環境を用意し続けることが大切ですが、これこそが最も難しいことです。秘訣があれば教えていただきたいです。
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